カンボジアの歴史探訪 2

つかいにくいのでFC2にて活動しますわ。

Prasat Snaeng Krabai Khang Cheung 2/2カリッカルの母かチャームンダ?

えー。

このPrasat Snaeng Krabai Khang Cheungの破風

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踊るシヴァ神Natarajaご一座である。

その右側
さらに、ドン!
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を見た私は、帰国して早速ほくそ笑みながら遺跡仲間のHさんにメールした。

「フフフ、この人だーれだ?」

私的答えは
Karikkal Ammaiyarカリッカルのアンマイヤー。

Vittorio Roveda"Images fo the Gods"から大雑把にご紹介すると、

「彼女は元々超美人で、敬虔なるシヴァ教徒だった。

南インドの港町、カリッカルの裕福な商人の息子と結婚するが
シヴァ神への思い覚めやらず、熱心に信仰を続けていた。
が、あろうことか夫が長期出張中に別の女を作ってしまった。

それを知ってしまった彼女は夫と別れ、シヴァ神への信仰にすべてを捧げて生きることを誓い、
男に煩わされることのないよう自分の姿を老婆のように、そして醜くして欲しいと、シヴァ神に祈った。

これを聞き届けたシヴァ神が、彼女をそのような姿に変えた・・・。」

とのこと。なんか分からないこともあるがまあこんなものだろう。
この姿は結構珍しいと本にもある。レアなお姿ゲットに浮かれてニヤニヤしつつ
遺跡マニア同志にちょと自慢。

さてさて。

しかしH氏より帰ってきた答えは意外なものだった。

「チャームンダー」

し、しらねえ。
あせってぐぐったら、
ああ、寄る年並みには勝てぬ、遠藤周作先生の晩年の名作「深い河」にも出てきてるではないか。
本読んでたのに、キレイさっぱり忘れてやがる。

引っ越して放置してる段ボル箱から発掘して本を読み直してみた、ああジャメ・ヴュ
全く記憶にございません。

遠藤周作「深い河」 講談社刊 より 七章 女神 添乗員の江波が語るシーン
(出典明示してるしアフェリエイト(初めて知った)まで貼ってるからいいですよね?ホコリか花粉症か本に鼻水が本に落ちたトホホ。)

「・・・この女神はチャームンダーと言います。チャームンダーは墓場に住んでいます。だから彼女の足もとには鳥に啄ばまれたり、ジャッカルに食べられている人間の死体があるでしょう」
・・・
「彼女の乳房はもう老婆のように萎びています。でもその萎びた乳房から乳を出して、並んでいる子供たちに与えています。彼女の右足はハンセン氏病のため、ただれていているのがわかりますか。腹部も飢えでへこみにへこみ、しかもそこにはが蠍が噛みついているでしょう。彼女はそんな病苦や痛みに耐えながらも、萎びた乳房から人間に乳を与えているんです。」

むう、言われてみれば、確かにこの老婆は、授乳するために子どもを抱いているように見えるではないか。

チャームンダーもシヴァ神と関係が深いようで、カーリーなどと混同されてもいるとか。

Karikkal Ammaiyarではないのか?
大体よその寺院では、彼女とはっきり分かるように、彫られているし、子どもなぞ抱いていない。
実例。
バンテアイ・スレイ寺院 10世紀末
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チャームンダーに見えなくもないが、やはりアンマイヤーであろう。

Phnom Cisor(プノム・チソー タケオ州)11世紀初頭。
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なかなかパンチが効いてるが、やはりアンマイヤーさんであろう。南インドっぽいではないか。
Natarajaというよりは笛を吹くシヴァ神ー確かこれもなんか名前があったと思うが?-というところが
変化球ではある。

バッタンボン博物館テラス 12世紀 一応アンコールワット様式(自信なし:ロプブリっぽい?)
追記 コメントご参照あれ。

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これだけ左側にいる。が伝説どおり、シヴァ神の足もとにいて右のUMAとタメを張り満足気である。

嫉妬深い奥さんのUMAもこの姿ゆえか彼女には警戒していないようである(以上妄想追加)。


これら3点のリンテルや破風は、カリッカルのアンマイヤーで確定できるだろう。
しかし。問題の子どもを抱いた姿のアレは?
どっちだ?

大体アンマイヤーがシヴァ神に仕えるのは分かったが、なんでいつも踊ってるときに出てくるんだ?
そこら辺の事情を書いてないとはVittorioさんよ、いつもながら詰めが甘いぜ。
いや人のこといえないし。

ぐぐったらインドのサイトが出てきました。これですべて納得です。
リンクするなと書いてないので貼らせてもらいやす。布教に貢献したということでシヴァ神のご加護を。


これによると、元々punithavathiyAr(読めねぇ)という名の彼女は美しいのも道理、神性を帯びていたようだ。

先ほどの夫の浮気のために(それまでも色々お話があるので上記サイトご覧くださいませ)
失意のどん底の彼女punithavathiyArさんが多分断食とかして苦行してこのお姿になり、、聖山へふらふら歩いてるとシヴァ神に出くわしたそうで、その姿をみたシヴァ神

「アンマイヤー(おっかさん)みたいだ」垂乳根の母よ。。

と言ったとかで、それで今の名前になったとか。
シヴァ神と会ったアンマイヤーさんは、シヴァ神に望みをかなえてあげるといわれ、輪廻転生から脱して
あなた様が踊るときその足元に常にいて、歌い称えたいと願ったそうです。

なるほど。

上の全員が踊るマハラジャならぬナタラージャの足もとにいるわけがやっと分かった。
どうせならここまで書いてくれよと軽く突っ込みつつ。

じゃ、みんなアンマイヤーさんでおk?

やはり子ども抱いてるお姿が気になる。
アンマイヤーというが、子どもはいないようだし。。。

"Images of Gods"によるとこのアンマイヤーさんは10-11世紀のが多いとか、で
バンテアイスレイと、未見のイサーンのKampeng Yaiのレリーフがあるそうである。
が、これはいまいち参考にはならない。

カリッカルのおっかさんアンマイヤーか地母神的要素もあるチャームンダーか?
どっちも母親的要素をもっているが。。。

なんか、混じってしまった?
ってのが私的かつ暫定的結論である。

多分、Snaeng Krabaiの彫刻担当者は(グルだろうけど)両方の話を知っていたのかもしれない。
大体が姿かたちは、がりがりで萎びた乳房、で共通しているし、母という属性も同じ。

それで、無意識にか故意にか、ごっちゃにしたのではないか?と。

他にも子どもを抱かせた理由が色々想像できるかもしれないが(たらちねの母ゆえ子ども抱かせてみただけ、とか)。

まあカンボジア風のアレンジといってしまえばそれでおしまいですが、こうやってちょっと妄想し続けるのもまた楽し。ってところで、今日(二日がかりになっちまった)のお話はおしまいです。

Hさんのおかげで勉強になりましたよ、ハイ。ありがとうございましたです。
やっぱインド見てきた人は違うな、と。

インド行くべきかいなか。。。

え?
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反対側にいるわれわれの立場はいったい。。。

参考文献
上記サイトに感謝します。
1.遠藤周作「深い河」講談社、1993
2.Vittorio Roveda"Images fo the Gods" Riverbooks,Bangkok,2003
もうなんだか残念なところが多いこの人の本も結構参考にはなります。
しかし、定価まで書いてあって$90(¥12600)ってあの当時でもどんな円安だ。
まあDVDも付いててお得。バンコクで値切れば75$とか。。


付録。
ああ、やっちまった。。。
2日の追加写真です。
コメントありがとうございました。

楼門です。
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この発想はなかった。なぜに砂岩の上にラテライト
砂岩より軽いかもしれませんが、それにしてもあまり見ないパタンです。。。

追記2 ああ、彫刻施すところだけ砂岩にしておいて、基本ラテライトで作ろうと思ったようです。
写真見てたらなんとなくそんな気が。。。

ナンディンに邪魔された人
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むしろ牛の着グルミに入るところか?
なぞであります。
しかしこのレリーフ作った人と語り合いたい。てか問い詰めたい。
と思ったあなたは、ナカーマ。