カンボジアの歴史探訪 2

つかいにくいのでFC2にて活動しますわ。

Vat Damnak Sdachの 碑文K.250について

碑文を必死で又訳してたら日が変わってしまいました。

本日は前回の寺院に残った碑文の解読です。
ので夜中になったのでこれ幸いとひとしきり。

文章だらけですので、つまらない方はスルーでよいです。

このK.250は破損がひどく、Coedes先生の時代から見ても、さらに壊れているようです。
でも野ざらしになってましたので、どうなることか。。。
内容はよく分からない部分が多いのですが

一行 2小節 
2行で1節
サンスクリットで28行、14節の碑文ですが、字体もアンコール初期で、
Coedes先生によると9世紀末、Indravarman1世王の時代ではないかと推測してますが、
この碑文から引き出せるものはない、などと書いてありました。

少しずつ読んでみましょう。
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番号は節を示します。

Ⅰ 月の内部から白い蒸気のように噴き出す輝きのように、
大いなるヴァラーハ(ヴィシュヌ神の化身の猪)の完璧な牙(の支える大地?)の富と繁栄があなたにもたらされるように。
Ⅱ勝利は、4本の腕を持ち、海の上で横たわり瞑想し、臍からハスの花を咲かせ、神を生み出すことに成功する神様に帰する。

ここまでは、明らかにヴィシュヌ神を称える文言が並んでるようです。

Ⅲ そのBhava(有=存在?)は、体を灰で飾り、人は幸運なことに、その存在は月の重さと、ガンガーの滝(流水)の重さとを同時に負う。


このⅢ節とⅣ節はシヴァ神を称えます。牛の糞の灰を体に塗ってたというシヴァ神を称えているようです。しかし調べて初めて知った。
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Ⅳ 激しい爆発・・・Rudraが輝き怒りの業火・・・破壊のためのように・・・
最愛の者の首・・・?

ルドラ神はシヴァ神の荒れ狂う暴風雨の様相の別名であるが(ルドラのほうが古いと思うが)、炎という感じではないような。インドラと混淆されていた昔、雷鳴を表す表現かもしれない。
断片的ではある。

Ⅴ節は解読不能、破損とかいてあるのみ。

Ⅵ 私はラクシュミーを称える、敵の運命を放棄し・・・月に(よって)勝ち誇り・・・
ヴィシュヌ神は人を破壊に駆り立てるような(殺人的な?)Madhu(はちみつで作った酒?)を捨てる。
あたかも・・・のように・・・・。

次はラクシュミーである。たぶんその美しさを、月に勝る、とヴィシュヌ神とともに(何らかのエピソードを引いて)
称えていたのではなかろうか。

ヴェーダ・・・を詠唱する 万物の創造者の口から、出てくる。攪拌された乳海から出てきた月の美しさに例えられるように・・・。

これをCoedes先生はサラスヴァティの讃歌と記しているが、乳海攪拌から出てきたのなら、ここもラクシュミーであろう。

が、ヴェーダとか、創造者の口から出てきた、というと(=口から出る、すなわちロゴス、言葉と考えれば、言葉やヴェーダの神である)サラスヴァティとなる。
どっちでもいいがサラスヴァティのほうが暇な神ブラウマ神を置いといて登場したか?

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ここら辺から碑文のコンディションが悪く苦労したが、

Ⅷ S’ri ・・・王がいましました。その号令は王たちの頭上に響き渡った。
王は持っていた・・・      ・・・その両親たちに・・・。
この王が何者かが問題である。
どうもこの文言こそ、 Indravarman1世王の碑文の常套句
「王の命令(アージュニャー)は中国、チャンパ、ジャワの王の頭の上を超えてジャスミンの花冠の如く世界中に響き渡り・・・」(かなりの誇大広告ですがw文献2,3にいずれも記述あり。)
ではないか、というのがCoedes先生の推測のようである。
しかし、この碑文はサンスクリットであり王の命令、はアージュニャーでなく、一度出たと思うが
s'asanahと書いてある。
これはこの王様のほかの碑文をいくつか当たってみないと分からないので宿題として置いておこう。

残りであるが、消えてる字を照合して画像に書くのにえらく苦労した。
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が、

訳はと見てみたら、

Ⅸ以降破損 
の一言で終わりだったorz。

ま、参考までに。。。てかやけくそだ。

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こんな感じでした。
時代や歴史のイベントではなく、神に捧げる讃歌が主体の碑文なので
いろいろ調べるとヒンドゥの神々の伝承が分かりました。

ちょっとだけ考察すると神様の搭乗順序が
ヴィシュヌ神が先、であることと、少なくともシヴァ神の奥さんUMAは登場してなさそう、か、
出てきてもラクシュミーよりあとと思われるので、
この碑文を残した王様か、その家臣はヴィシュヌ教徒だと思われます。

というわけで平日に碑文を読むのはやはりやめておこうと思いつつ。
明日からどうするべいか。。。

参考文献
1.Coedes、G " INSCRIPTIONS DU CAMBODGE vol.3 pp100-101" EFEO, Paris ,1951
2.G.セデス 「東南アジア文明史」(山本智教訳) 大蔵出版、1989,2002
3.ブリュノ・ダジャンス「アンコール・ワットの時代」(石澤良昭、中島節子)連合出版、2008

どうでもいいが石澤先生
本の題名にアンコール・ワットと入れるのが好きだな。。。
まあ知名度があるのでそっちのほうが売れやすいからだろうけど、
上の訳書はアンコール・ワットの時代だけではないのでどうなんだろう?
まえがきで書いてらっしゃるけど。
まあいいや。