カンボジアの歴史探訪 2

つかいにくいのでFC2にて活動しますわ。

おさらいメモ Gajendra Moksha 6/13改

えー。

10年ちょっと前に書いた、
Vat Saen SamranことArak Thalo 510 IK627,今読み返すと滅茶苦茶書いてますが、まああえて過ちはそのままにしておきますが、

その中で、
イメージ 1

これをずっとナラシンハかなんかに退治されてる悪い象かと思っていたんですが、
(Kalkiを悪役と思ってたのも恥ずかしい間違いですがw)

昨日わたくしの知人かつ師匠ともいうべき方に、このモチーフはなんぞやと問われ、そういやなんだろと
改めて調べてみました。

当時上げていまして、実際あまりおみせするのも憚られるのですがw
かつて某女性の砦でガブリつきで撮影した同意匠と考えてよい、一枚を再度。

イメージ 2


こちらはマカラが象をかじっております。
マカラの上にはマカラをvahanaとしている水天ことVaruna神が乗っております。
シュールです。


さあ、ググってみます。

まず悪い象を退治する神と言えば、
検索結果出てくるのは、

シヴァ神ないしその原型のルドラ神が象の上に乗ってやっつけています。

もう一つクリシュナ神が興奮して我を忘れた象を投げ飛ばしております。
(のちの仏教説話酔象調伏の元ネタのようにも思えますが)

しかしどちらも人型の神のまま退治しております。

じゃあVaruna神が象を退治するような説話はないのか?

なさそうです。

・・・

もしかしたら、

悪い象を退治するというのは、ちょっと違うのか?

ではマカラが象を噛みつく、ないし食うというのはどうか。
検索してみますと、


こちらのサイトの文を読みますと、インドにも同モチーフの遺物があるようで、
参照頂けたらお分かりのように、マカラと思しき怪物が象を飲み込んでいます。

ユーレイカ

で、このモチーフをなんというのか、読んでみますと、
Gajendra Moksha
というようです。

はい今度はwikiってみましょう。

もちろん日本人でこんな記事書く人はいないようです。
英語版です。

これですね。

冒頭だけ簡単に訳してみますと、
「Gajendra MokshaないしはGajendra の解放とは、ヒンドゥー教典の中でも最も神聖なもののひとつである、パガヴァッタ・プラーナ中の8つめのSkandha(日本語では仏教用語の蘊:うん)である。ヴィシュヌ神の積んだ(というか集めた)功徳の中でも有名なものの一つである。

「この挿話の中で、ヴィシュヌ神は大地に降り立ち、ワニ、ないしはマカラの食いつきから象(の王)Gajendraを守り、そのヴィシュヌ神の助けによりGajendraがMoksha(解脱:輪廻からの救済)に至り、Sarupya Muktiという神となりVaikuntha(ヴィシュヌ神夫婦とヴィシュヌによって解脱に至った魂が暮らす神殿というかいわばヴァルハラみたいなもの)に行った。

ということらしいですが。

大雑把にストーリーを述べますと、

象の王であるGajendraは象たちと池に水浴に来たところマカラないしはワニに足を噛みつかれて、池に引きずり込まれそうになる。このワニ、もしくはマカラもいろいろ因縁があるらしいが割愛。追記:実際はこのワニの解脱(Moksha)も併せて二つの魂の救済がテーマらしい。


させじと踏ん張っているうちに1000年経ってしまった。最初助けようとしていた家族や部下もみんな
死んでしまうかいなくなる。

さすがに疲れて、もうあかん、負ける、と思い、ヴィシュヌ神にお助け下さいと祈りを捧げた。

ヴィシュヌ神はそれを聞き届けGajendraの元へ向かうと、Gajendraは蓮の花を鼻で持って捧げた。
それをみてヴィシュヌ神は自分への信仰が本物であると満足し、必殺の武器の一つあのSudarshana Chakra
円輪(右の上の腕に持つ)をワニ(マカラ)に投げつけ首を刎ね飛ばす。ワニもこれで因縁から逃れられ、解脱するらしいんですがこれはおいといて、

跪くGajendraに、

「実はお前はIndrayumnaという王で、敬虔なヴィシュヌ教徒ではあったが、聖者アガスティヤ(いろんな話に出てくる)に対し椅子に座ったまま礼儀を欠き無礼を働いたたため、象に生まれ変わる呪いがかかってしまったのだ。しかし王であった時代から敬虔なヴィシュヌ教徒であったので、象の王に生まれ変わり、すべてのプライドや疑念を投げ捨てヴィシュヌ神に心から帰依したならば、Kaivalya(不関、孤立、悟りのような信仰の最終目的の境地らしい)に達するようにしたのだ」

ヴィシュヌ神が説き、この一事を以てGajenrdaことIndrayumnaはそれをなした。

というのがあらすじのようです。

このモチーフは東メボンにもあると教えてもらったのですが、わたくしも14,5年前に行ったきりでろくろく見てもいませんので機会があれば探してみようと思います(インドラではない象のリンテルはありましたがちょっと違う様でした)。

ちなみにマハーバーラタの王にもIndrayumna王がいるんですが、この王と関係はあまりなさそうです。
同名の王が各地域に散発するのはカンボジアのお手本であるインドも同様なようです。


さて、振り返ってカンボジアのリンテルの意匠を再度見てみますと、

画像が少ないので何度でも使いまわしますが。

イメージ 2


うーん、足を噛まれて池に引きずり込むというよりは、

頭から

オレオマエマルカジリ

みたいになっております。
まあバンテアイスレイのほうは、両脇にワニか得体のしれない怪物かが噛みついてもいますので
まあこじつけられなくはないですが。


6/13追加。
東メボンRoveta氏の例示しているのはどうみてもアイラヴァータなので、
コンディションは悪いですが、バンテアイスレイと同意匠のものをやっと見つけましたので、
追加しておきます。


イメージ 3

やはり頭からかじられてますが象が立ってるのは斬新ですね。
なんかかわいい感じもしますね。
・・・


Vat Saen Samranのほうは、リンテルの両側に鏡写しのように同じ意匠があって、
当時は仏像の台座と、外に残欠がそれぞれあったと思いますが、

イメージ 1

異形の怪物、ナラシンハに見えるようですが、
強いて言えばマカラと強弁できなくはないですが、

頭をもってますのでどうでしょうねw

うーん合っているのか違うのか。

なにかこれぞというヒントがあればご教示いただきたいですが、

まあ
今のところ蓋然性が高いかな、というところでご寛恕いただければと思います。

まあこうやっていろいろ調べたりしてあっという間に2,3時間は経ってしまいますが
妄想したりRoveta氏の本にツッコミ入れたり、それもまた楽しみのひとつでもあります。

2019.5追記 Prasat Trapeang Chambak(Phnom Bok東麓)で同意匠のリンテルを見出しました。
イメージ 4

移転後のために画像追加。

これらを見るとここが最古で山頂の遺跡と同じくらいの10世紀初頭、あとは10世紀後半の寺院が多いですね。
ヴィシュヌ教徒と思しきSuriyavarman2世は残してないでしょうかね。」」

ラーマーヤナどうしたものか(今更感)



Vittorio Roveta"Images Of the Gods"追記pp67,69また微妙な画像(Thommanon)を例示してますが、どうでしょね。Gajendraは索引にあってもMokshaまではないのがまたわかりにくいところ。

River books 2005